意外と影響の大きい、電子帳簿保存法の改正
2021/11/01 16:14:50 経済一般
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令和3年度の税制改正の中の1つに「電子帳簿保存法」の改正というのがあり、令和4年1月より施行されます。今までも帳簿書類の電子保存は認められていたのですが、要件が厳しく、あまり使われていませんでした。今回はその要件が緩和されたことと、一部に紙保存ではダメで、必ず電子保存しないといけないものが新たにできたため、注意が必要になります。
まず要件の緩和の方ですが、①税務署への事前申請が不要になった、②タイムスタンプの付与期間が3日以内→2ヶ月以内(+7営業日)に変更、③検索要件が緩和、などが挙げられます。
タイムスタンプとは、スキャン等をした電子データに、データが存在した日付とその日以後データが改ざんされていないことを証明するものになります。タイムスタンプの技術を提供している業者自体が少ないですが、今後改正に伴い増えてくるものと思われます。またクラウド会計等では仕訳データにスキャンした領収書がひも付けされ、修正や削除の履歴も残るようになっていますので、これらのシステム上で保管する電子データについてはタイムスタンプ自体が不要になります。
ここまでは電子保存を考えていない方には何の影響もないのですが、ここからは全ての方に影響がありまして、電子取引で行われる電子データ(のうち国税に関係する書類)の保存は「電子保存が義務化」になります。
電子取引とは、メール添付、web送受信、インターネット上、ファックス等により行われる取引と定義されており、例えばメールに添付されたPDF形式の請求書を受け取った場合、ネットで買い物をした場合、インターネットバンキングで振込をした場合等が挙げられます。
令和4年1月以降は、PDFで受け取った請求書を印刷して紙保管をしても税務上の保管要件を満たさないことになります。最悪青色申告取り消しもあると国税庁は言っています。そのため、相手側にタイムスタンプを付してもらうか、タイムスタンプのないデータを受け取った時は自分で速やかにタイムスタンプを付すことが義務づけられます。
現時点では、タイムスタンプを導入しようにも取り扱いサービスが少なく、整備されるにしてももう少し世間の動向を見てからのほうがいいかもしれません。会計ソフト会社も現時点で全てに対応できてはいないようです。アマゾンや楽天で買い物をして領収書をダウンロードする際には自動的にタイムスタンプが付与されるようにしてくれたら便利なのになーと思いますが、あくまで私の希望的観測です・・。
日本低迷を象徴する、東芝の迷走っぷり
2021/04/30 13:09:43 経済一般
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東芝といえば、1875年に創業し、現在グループ従業員数12万人を超える日本を代表する世界的企業の1つですが、最近新聞やニュースでよく取り上げられる企業でもあります。個人的には、この東芝の迷走が低迷する日本を象徴していると思っております。
東芝迷走の始まりは2015年、まず内部通報により粉飾決算が発覚しました。社内に厳しいノルマ、パワハラが横行した結果、7年にわたり合計2,306億円の利益をかさ上げしていました。また2017年にはアメリカ原子力子会社が原発建設遅延などにより破綻。損失金額の計上方法を巡って監査法人とも揉めて2度の決算発表延期をした末に、最終約1兆円の損失を発表して東芝自体も破綻危機に陥ります。2018年には稼ぎ頭の東芝メモリ(現キオクシア)を国外企業等に売却して債務超過を回避し(ちなみにサザエさんのスポンサーを降りたのもこのころ)現在に至っています。
で、何が日本低迷の象徴なの?ということですが、社内のパワーバランスしか考えない組織体質とか、東日本大震災後も原発事業を継続したあげくの失敗という時代の流れの見る目のなさ、等ももちろんあるのですが、やはり半導体事業にあると思います。
1989年(平成元年)ころは、日本の半導体の世界シェアは50%強に達していました。半導体は家電品、パソコン、スマホ、インターネット、インフラなど、当時も今もあらゆるものに欠かせない存在で、戦後復興~高度成長期~バブル期と突っ走ってきた日本が、世界のトップランナーの一角にまで復活したことの象徴の1つでした。
それが今は6%にまで低迷しています。バブル崩壊後は国外に人材が流出して技術を奪われ、2013年には東広島市にメイン工場があった当時世界4位の半導体メーカーが経営破たんでアメリカのマイクロン社に売却、シャープも2016年台湾の鴻海精密工業傘下になり、はてにはこの東芝メモリ売却です・・。これが、世界への影響力もすっかり低下し、アメリカと中国の覇権争いに挟まれ右往左往している今の日本の象徴と言わずして何なのか・・。
そして最近東芝がよくニュースで出てくるのは、イギリス系投資ファンドが東芝を約2兆円で買収したいという提案がされたからです。これが外資資金で実現しますと、まだ4割程度株式を保有している前述キオクシアを含めて完全に外資の手に落ちるわけです。
東芝には原発事業等も残っていますので、そのまま全て国外に流出はさすがにいかん、ということで、日本の外資規制審査が関わり、最終的には日本企業も含めた買収案が提示されるという話になっています。
買収提案のニュースが流れたのが4/7ですが、今度は4/14に社長辞任(事実上の解任と言われています)のニュースが出ました。辞任した車谷社長は買収提案したイギリス系投資ファンドの日本法人出身ということで、様々な憶測が流れています。まだ迷走は終わりそうにありません・・。
今後の政府のコロナ対応は?
2021/03/01 17:46:11 経済一般
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日本ではコロナ感染者数は減少しつつありますが、まだまだ予断を許さない状況です。政府では令和2年度第3次補正予算と令和3年度予算で、いくつか追加対策を決定しています。
(1)事業再構築補助金
ポストコロナ時代に対応するために思い切った事業再構築(業態転換や新分野展開など)を
行った場合の設備投資等の金額について上限6,000万円のうち3分の2までを補助する、というものです。対象月の売上10%以上減少、支援機関等との事業計画策定、付加価値の年3%以上の増加などの要件があります。
これらは申請すれば必ずもらえるわけではなく、また申請が採択されて設備投資を行った後に補助金がおります。採択率は初回70%~と言われております。また、交付決定後1年程度の補助事業期間を経て実績報告を行った後に補助金の支払いがされますので、補助金支給は早くて令和4年の後半くらいになります。
(2)一時支援金
令和3年1月に発令された緊急事態宣言に伴う、飲食店の時短営業や不要不急の外出・移動自粛により売上が50%以上減少した場合に、法人60万円、個人事業者30万円を限度として支給される支援金です。
緊急事態宣言に伴ってということですので、例えば広島県は緊急事態宣言が発令されておりませんので基本的には対象外ですが、概要を読みますと地域外の事業者でも要件を満たせば給付対象となる、とは書いております。
対象事業者は限定されており、飲食店、飲食店への卸業者・設備業者・流通業者・生産者など、または対面で個人向けに商品・サービスの提供を行う事業者(タクシー、ホテル等、カラオケ、小売店など)となっております。
審査手続きは、受付後TV会議や電話等の事前確認等を経て申請→審査という流れになるようです。
(1)(2)とも詳細は3月上旬以降決定されていくと思います。
(3)感染拡大防止支度補助金(医療機関むけ)
医療機関では令和2年度で、コロナ感染症対策費用として県から最大100万円の補助金がありましたが、第3次補正予算で、これとは別に厚生労働省に直接申請する形で最大25万円(指定医療機関、有床診療所等は別枠あり)が補助されます。県のものと領収書等が重なってはいけませんが、補助対象となる経費の種類は県のものとほぼ同じです。また令和3年度予算もありますので、補正予算分で申請しない場合は令和3年4月以降の経費に対して改めて申請することもできます。
コロナ対策がもたらすインフレで経済はどうなるか
2021/01/06 10:32:22 経済一般
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日本はもちろん世界各国で、コロナ禍での経済活動の自粛や縮小による景気後退を防ぐための大幅な財政出動がなされています。日本でも1人10万円の定額給付金をはじめ、コロナ対応融資、持続化給付金、家賃支援給付金など、「日本も本気出せばこれだけ財政出動できるんですね」と思わせるほど速く大規模な対応がされたと思いますし、今も第三次補正予算で追加の支援対策が審議されています。
そして近い将来コロナ禍は必ず落ち着きますので、その時経済はどうなるかと言いますと、世界全体でインフレになります。財政出動で市場に大量のお金が出回ったからです。
インフレになる仕組みはこうです。市場に大量のお金が出回ったためみんなの財布は潤います。そしてコロナ禍の落ち着きに伴い経済は活発になり、お金が手元にあるためみんな物を買いに回るので「高くても売れる」ようになり、物の値段は上がっていきます。そして物価は上昇=インフレとなります。
インフレ自体は、基本的には経済にとってプラスになることが多いのですが、ただ日本はバブル崩壊以後二十数年間賃金が上がっていない、先進国の中では悪い意味で特殊な国です。ただでさえ最悪のタイミングで消費税を増税していますので、コロナ後急に賃金が上がるとも考えにくいですから、収入は増えずに物の金額だけが上がるという家計にとっては苦しい状況になると思います。
一方、インフレは物の価値が(お金と相対して)上がります。理論的には不動産、株価も上がります。不動産はコロナ禍でテナントビル等は下落傾向ですが、居住用マンションは好立地物件を中心に依然として高止まりしています。株価は春先には大幅下落しましたがその後上昇に転じ、現在はコロナ前よりもはるかに高い水準にあります。
株価が大幅に上昇しているのはインフレの影響もありますが、先述の財政出動によりダブついた市場のお金が運用先を求めて株買いに集中したことが大きいです。NYダウなどはすでに史上最高値を更新し続けていますし、ビットコインなども年末あたりから3年前のバブル時の高値を大幅に超えて来ています。インフレは相対的にお金の価値が下がるわけですから、インフレ対策としての投資を考えることも必要かと思います。
正しい努力をしよう
2020/12/01 16:18:35 経済一般
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受験生の子どもさんをもつ方は特にご存知かと思いますが、今年度より大学入試センター試験が大学入学共通テストに変わります。記述式の導入などはすったもんだの末見送られましたが、丸暗記の能力を問うのではなく、思考力、判断力、表現力を中心に評価を行う内容に変わるとのことで、平均点が約1割下がるだろうと言われています。
この入試制度の変遷の大きな理由には日本の国際的競争力の低下があり、その理由の一つとして大学生の学力低下があると言われています。大学側は「もっと真に優秀な人材がほしい」「賢い学生がほしい」との欲求が年々ストレートになっているそうです。
ここからは私見ですが、学力低下の根本的原因は「ゆとり教育」の失敗にあると思います。ゆとり教育は2002年~2011年ころまで実施され、つめこみ教育を見直して緩和し、生きる力の育成、思考力の向上などを目的とされました。
私が思うゆとり教育の失敗はこうです。例えば「新しい発明をする力」を身につけさせたいとします。そして「新しい発明は、散歩などのゆとりある時間を過ごすなかで突然ひらめくもの」だったとします。
「なるほど、日本人はつめこみ教育で忙しくゆとりがないから新しい発明が苦手なのか。ならば勉強時間を減らし、土曜日を休みにし、空いた時間で散歩をすることで発明を考える習慣をつけよう。」その結果が学力の低下、ひいては競争力の低下に繋がったのではないでしょうか。
新しい発明のためには、まず正しい努力に基づく豊富なインプットが必須であり、その上でアウトプット、原因把握、改善などのサイクル(仕事で言うとPDCAですね)が継続的になされた上で、それでも煮詰まった時、時には散歩など違うことをして物事を俯瞰して見ることで一連のサイクルでは見えなかったことが突然見え、それが新しい発明として実を結んだ。こういうのが発明までの正しい努力過程ではないでしょうか。
この正しい努力過程を知らない人が「散歩(ゆとり)=発明」と安易に組み立ててしまったことが失敗で、ゆとり教育制度という壮大な社会実験によりその失敗が証明されてしまったのだと思います。
ちなみに脱ゆとり教育世代である現在の子ども(小学校~高校生)は、今の大人より遥かに学習内容が濃くて多く、忙しい日々を過ごしていますが、もしかして今、日本の労働力に対しては同じような失敗に誘導しようとしていませんか?
正しい努力により、経営を、社会を正しい方向に導けるよう務めていきたいです。