退職金を自分で準備する方法
2023/03/01 17:56:31 節税
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退職金は、数十年働いたことに対する自分自身への最後の対価です。リタイア後のことを考えるといくらあってもいい!と思いますが、経営者・事業者の方は、自分で準備しておかないと誰も準備してくれません。
もちろん給与・賞与の一部を貯蓄していく形でもいいのですが、退職金として準備するほうが税務的なメリットは大きくなります。①一定の方法で準備(積立)することで、その積立金が経費や所得控除になる、②退職金として受け取ったときの税金が優遇されている、③受け取った退職金は社会保険料等の対象にならない、などです。
とは言え、中退共や特退共といった毎月退職金を積み立てていく制度は、従業員さんには使えても経営者自身には使えませんので、下記の3つの商品を組み合わせて積み立てます。
(1)倒産防止共済を使う
意外に思われるかもしれませんが、倒産防止共済は退職金準備に使うほうがいいと思います。倒産防止共済は年額240万円、累計800万円をマックスに積み立てができ、積み立てなのに全額経費にできるので今や数少ない節税商品の一つですが、最大のデメリットは解約時に全額利益に上がることです。適当な時期に解約してしまうと、解約時に節税した税金を全部吐き出すことになるので、実は使い勝手が難しいのですが、これを退職金積立金と位置づけてしまいます。
800万円まで積み立ててずっと置いておき、退職金を支給する時にこれを解約して全額退職金に充てることで、解約益が全額退職金という経費で相殺され、解約にかかる税負担が発生しません(法人の場合)。また途中での一部解約はできませんが、積み立てておけば契約者貸付も受けられるので、一時的な運転資金借入の担保にもなります。
(2)生命保険を使う
800万円ではとても足りない!という場合には退職金の2階部分という意味合いで法人契約の生命保険を使います。なだらかに解約返戻率が上がっていき、リタイア予定時に返戻率がピークにくる長期平準定期保険などがいいと思います。退職金を3,000万円準備したいなら、生命保険で2,200万円を積み立てるイメージです。以前ほどではないにせよ一部節税効果もありますし、生命保険本来の目的である死亡保障等がつくので、経営リスクも減少できます。トータルメリットが大きいので、法人契約の生命保険は一本はほしいです。ただし損金性のないドル建て変額保険などを勧められた場合は、本当に今ベターな保険商品なのか検討する必要がありますので、契約前に一度ご相談いただければと思います。
(3)小規模共済共済を使う
うちは法人じゃない!という方は小規模共済で積み立てます。こちらも全額所得控除になる積立金です。不動産貸付業の個人や、法人の役員(医療法人、NPO法人等は不可)でも加入できます(契約自体は個人)。小規模共済は一括でも年金形式でも受け取ることができます。
新NISAと暦年贈与の改正を解説!
2023/01/05 16:03:27 節税
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令和4年12月16日に令和5年度税制改正大綱が発表されました。今回の目玉は2つありまして、「新NISA」と「暦年贈与の見直し」です。
まずNISAですが、令和6年1月より制度変更されます。年間投資枠が大幅に増加しまして、一般NISA(「成長投資枠」に名称変更)が120万円→240万円に、つみたてNISA(「つみたて投資枠」に名称変更)が40万円→120万円になります。しかも今までは一般分と積立分のどちらかしか選べなかったのが、どちらも併用することができるため、5年間の非課税限度額の枠が600~800万円→1,800万円と、かなり増えました。
もうひとつの大きな変化は、非課税枠が繰り返し何度でも使える点です。今までは、例えば1月に枠いっぱい120万円で株式を購入し、2月に売却したとすると、この120万円の枠はその年はもう使えませんでした。改正後のNISAは何度でも使えますので、その後また3月に購入→4月に売却→5月に購入、などと繰り返し使うことができます。
この新NISAは、かなり使えると思います。1,800万円というかなり大きい資金を非課税でガッツリ運用できるわけですし、枠が繰り返し使えるので相場に応じて銘柄入れ替えを流動的に行うことができ、短期売買にも使えることになります。ただし現行NISAもそうですが、NISA枠で買った株式を売却して損が出た際にその損失を一般購入分の利益と相殺できないというデメリットは残ったままです。あまり語られないですがこのデメリットは結構大きいので、配慮した上で利用する必要があります。
また暦年贈与の見直しですが、今までは相続開始3年前までに贈与された財産は、相続税の計算時にもう一度入れ直して計算されていましたが、令和6年1月以降これが「7年」に改正され、つまり7年前までの生前贈与は無効になります(一定期間内は3~7年前の贈与分が最大100万円までは有効)。もちろんそれ以前の贈与や相続人以外(例えば孫など)への贈与は有効ですので、全ての生前贈与の意味がなくなるわけではありませんが、より長期計画での相続対策が必要になってきます。
ただそれだけだと若い世代への財産移転がますます滞るじゃないか、ということで、相続時精算課税につき基礎控除が認められることになりました。相続時精算課税は2,500万円までの一定の生前贈与には贈与税を課さないで相続税で精算する制度ですが、一度使うと年間110万円の贈与税非課税枠が一切使えなくなっていました。これが使えるようになり、かつ無効になる生前贈与の額は基礎控除を引いた後の金額でいい(←結構重要です)と改正されたので、相続時精算課税を利用したほうが有利になるケースも増えてくると思います。
最後に、防衛費捻出のため令和6年以降のどこかで法人税4~4.5%、所得税1%を増税すると発表しています。やむを得ないと考えるか、冗談じゃない!か、賛否両論ありそうですね。
「収入300万円以下は雑所得」の意味するところ
2022/09/01 15:39:56 節税
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国税庁が8/1に出した所得税の通達(法令解釈)の改正案が話題になっています。通達は税法そのものではないですが、「国税当局としてはこう解釈して税法を運用しますよ」という指針になります。そして話題になっている内容は、「収入金額(=年売上高)が300万円以下のものは、原則雑所得」という一文です。
今まで個人で事業・副業をしていて確定申告をする場合、それが「対価を得て継続的に行う事業」の場合は「事業所得」、そこまでではないものは「雑所得」と区分されていました。じゃあ具体的に事業所得と雑所得の境目ってどこよ?と聞かれると、はっきり決められていなかったので、実際のところ本人が「これは事業よ」と言えば事業所得、みたいなわりとアバウトな感じもありました。今回、今さらながらその境目が示された形です。(なお所得税の取り扱いなので、法人には関係ありません。)
では事業所得と雑所得で何が変わるのかという点ですが、両者とも売上から経費を引いた残りが利益で、それに対して累進課税で所得税が課される、という部分は同じです。異なるのは、雑所得の場合①青色申告特別控除(10~65万円)が受けられない、②青色事業専従者給与が支給できない(白色申告の事業専従者控除も取れない)、③損失が出た場合他の所得と損益通算(=相殺)ができない、という点になります。他にも純損失の繰越控除ができない、30万円未満の少額減価償却資産の特例が使えない、などもあります。
①②の意味するところは、事業を行って利益が出た場合、「がっつりやらないと税金計算の時の優遇を受けさせないよ」ということになります。日本政府は副業を推進してるのだからがっつりやりなよ、と言いたいのかもしれませんが、努めている会社が副業禁止でこっそりやっている程度では税金は優遇されない、という不公平感が出る気がしますね。
また③は流行りの「サラリーマン節税」を封じる意味があります。書店でこれ関連の書籍がたくさん並んでいますが、例えば売上を10万円、経費を(入れれるだけ入れ込んで)200万円計上し、赤字の△190万円を給与所得と相殺する申告をして、給与から天引されていた所得税を還付してもらう、みたいなスキームです。ほぼ税金還付を目的にしている事業なんか、事業じゃないだろう!という税務当局の言いたいことはわかりますが、事業の黎明期で本当に赤字がかさんでいる場合も杓子定規に相殺を認めないのか、という問題も出てきます。
なおこの内容は8/31までパブリックコメントを募集しており、その内容によっては原案が修正される可能性があります。また改正が施行された場合、令和4年分以後の所得税について適用されます。つまり令和4年1月以降の事業までさかのぼって影響を受けますので、ご注意ください。
意外ともうすぐ!?インボイス制度
2022/05/31 18:03:04 節税
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インボイス制度の概要は令和3年10月1日号(第92号)の事務所通信でお伝えしましたが、法案は平成の時代にすでに成立しており、令和5年10月より施行されます。まだ一年以上先ですが、取引先から登録番号を聞かれるケースが散見されるなど、意外ともうすぐなのです。ちなみに登録番号は法人はT+法人番号と最初から決まっているのですが、(わかっているからと登録申請せずに使用するのは違法です。一応)個人はマイナンバーとは関係ない13桁の番号が割り振りされます。TはたぶんtaxのTなのでしょうね。
もともと毎期消費税の申告納税をしている事業者にとっては、「適格請求書発行事業者の登録申請」をすれば2週間程度で登録通知が来ますので、令和5年10月以降に発行する請求書や領収書にその登録番号を載せれば、あとは事務的に変わることはあまりありません。また申請することによるデメリットも特にありません。弊社では、決算時に合わせて登録申請をさせていただいているケースが多いです(各担当者が随時ご案内いたします)。
問題は免税事業者または年間課税売上高が年度によって1,000万円に届いたり届かなったりするような事業者の場合です。売上先がほぼ100%事業者である場合は基本的には申請したほうがいい(せざるを得ない)のですが、売上先の大半が個人消費者の場合は、個々の状況に応じて判断する必要があります。たとえば飲食店の場合、飲食代を接待費として経費にするつもりのお客様から「登録番号がないのなら消費税分は支払わない」と言われるケースが時々あるでしょうが、一般消費者の方がその点意識する場合は少ないでしょうから、申請をして毎年納税をするほうが損なのでやっぱり申請はやめておこう、という判断になる場合もあります。
またインボイス制度の開始は令和5年10月からですが、令和5年3月31日までに申請しておかないと、原則令和5年10月からではなく翌事業年度からしか登録されませんので、注意が必要です。登録申請に合わせて簡易課税の選択申請をしたほうがいいケースもありますので、これらの点をからめて各担当者から提案がありましたら一緒にご確認をお願いします。
最後に、自社で会計処理をされている経理担当者様へ。令和5年10月以降は全ての領収書請求書に登録番号があるか否かを確認し、消費税コードを変えていかないといけません。インボイス制度開始後6年間は登録番号がない領収書等でも8割または5割のみ仕入税額控除が認められる経過措置があります。これらも全て区分が必要です。はっきり言って、結構面倒になりますよ!涙
令和4年度税制改正
2022/01/04 13:22:40 節税
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昨年12月に令和4年度の税制改正大綱が発表されました。特に気になるものをご紹介させていただきます。
(1)中小企業所得拡大促進税制(賃上げ促進税制)
給与支給額が増加した場合の税額控除です。この税制は令和3年4月以後開始事業年度から「2年以上継続して雇用していた雇用者への給与額」という制約が外れ、とにかく雇用者への給与支給額が1.5%以上増加した場合に税額控除の対象となっています。給与増加額×15%~25%(法人税額×20%限度)が税額控除額でしたが、令和4年4月以後開始事業年度からこれが拡大され最大で給与増加額×40%まで法人税額・所得税額が控除されるようになります。ただし赤字法人等には引き続き適用がないので、この税制がどこまでコロナ禍での中小企業の賃金上昇に貢献するのか微妙ではあります。
(2)住宅ローン控除の改正
令和4・5年の住宅ローン控除額が借入残高の1%→0.7%に引き下げられ、ただし控除期間は10→13年に拡大されました(認定住宅等以外の場合)。こちらの意味するところは、近年の住宅ローン金利低下により金利が1%未満の場合は支払う金利より控除される税金のほうが大きくなるいわゆる「逆ザヤ」の発生が頻発するようになり、住宅ローンを借りる必要がない人まで逆ザヤをゲットするようになっている流れを抑えるためです。
言い換えればこのような改正がされるほど住宅ローン金利は低下傾向が続いているわけで(低い場合だと0.5%以下のものもあり)、今の住宅ローン金利が高いと思われている方は借り換えの検討をされてもいいと思います。
(3)電子帳簿保存法について
前々回の通信でお知らせした一部データ保存の義務化については、影響の大きさや世間的な対応が間に合わないということもあってか、2年間の経過措置が認められました。つまり、本格施行は令和6年からとなります。財務省や国税庁が一度決定した事項について施行までの経過措置を後で設けるというのは極めて異例のことです。
(4)その他
令和4・5年の住宅資金贈与特例の非課税金額は500万円(耐震住宅等は1,000万円)と一部縮小されました。また貸付用の固定資産取得については10万円未満でも全額算入ができないという特例が加わり、少額なドローンや足場を大量購入してレンタルする、というスキームの節税が塞がれました。
なお、贈与税の基礎控除(年間110万円)の見直し(廃止を含めて)がされるのではないかと言われていましたが、今回は見送られたようです。あくまで今回はですが。