増資って何?メリット・デメリットと税務上の注意点
2019/12/02 19:50:29 節税
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最初に会社を設立するときには、その会社の事業の元手として出したお金を資本金として会社に入れます。お金を出した人は株主となり、法律上その会社の所有者となります。増資とは、会社設立後に追加で資本金を増やすことを言います。
大きく見ると、会社の資金調達の種類は2種類しかなく、返さなくていいお金(資本金など=自己資本)と、返さないといけないお金(借入金など=他人資本)に分けられます。資本金が増えるということは、会社にとっては返さなくていいお金が増えることになり、それだけ財務基盤が強化されることになります。増資の方法には、追加で資金を入れる方法(有償増資)以外に、お金を入れないで会計処理上だけで資本金を増やす方法(無償増資)、また無償増資の方法の一つとして、借入金を資本金に組み入れる方法(DESという)などもあります。
増資の時に注意しないといけないのは、知らず知らずのうちに株主間で贈与関係が発生し、贈与税を払わないといけなくなることがあるということです。例えば100株=100万円を株主Aさんが出資して会社を新しく作って、その会社が儲かって1,000万円の利益を出したとします。その後Bさんが、俺にも出資させてくれと、Aさんと同条件で100株=100万円を追加出資したとします。
これでBさんには53万円の贈与税がかかってしまいます(AさんとBさんが親子でないと仮定)。なぜだか分かりますか・・?
Bさんが出資する直前、Aさんの所有する100株は、出資金100万円+利益1,000万円=1,100万円の価値(時価)があります。ここでBさんが出資すると、会社の価値総額は1,100万円+Bさん出資金100万円=1,200万円。この時点で株主はAさん100株、Bさん100株なので、合計200株。AさんとBさんの株式価値はそれぞれ1,200万円×100/200株=600万円になります。
Aさんの株式の価値は1,100万円から600万円に減ってしまいました。一方Bさんは100万円出資しただけなのに600万円の価値を手にしました。これは実質AさんからBさんに500万円の価値が移転したということになり、「実質的に贈与があった」とみなされるからです。そうならないためには、Bさんは100株を1,100万円で取得しなければいけません。
資本金が増えると、法人の納税額にも影響が出ます。ひとつは法人市民税の均等割です。資本金が1,000万円以下ですと年額5~12万円、それ以上1億円以下で13~15万円、1億円超10億円以下で16~40万円、といった具合です(広島市の場合。厳密には資本金「等」で判定)。
また資本金が1億円を超えると、法人税法上(中小企業ではなく)大法人とみなされます。こうなると、軽減税率の不適用、交際費の一部損金不算入、留保金課税、30万円未満の資産の全額損金算入特例の不適用、繰越欠損金の一部使用不可、法人事業税の外形標準課税適用(赤字でも事業税が発生する)など、さまざまな特例措置が使えなくなります。4年前にシャープが経営再建のため1億円にまで減資して中小企業の特例措置の適用を受けようとした(批判が相次いだため取りやめた)くらいですから、この影響はかなり大きいのです!
103万円の壁は崩壊!現状を正確に確認
2019/08/01 20:11:13 節税
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「年収を103万円以内に抑えないと、主人の扶養から外れたら大変・・」奥様がパートで働く場合によく言われるセリフです。現在、これは正しくなくなっています。
「扶養」には2種類あり、その要件が異なります。(1)税金の扶養から外れるのが年収103万円(通勤費除く)以下、(2)社会保険等の扶養から外れるのが130万円(通勤費含む)以下、になります(給与収入のみの場合)。それ自体は変わっていないのですが、(1)には続きがあります。
まず、年収103万円以下の場合は、ご主人は配偶者控除38万円が取れます。これは変わりません。そして103万円を超えた場合、確かに配偶者控除は取れなくなりますが、その替わりに配偶者特別控除が取れます。しかも税制改正により、平成30年以降は年収150万円以下の場合は配偶者特別控除が38万円取れます。つまり奥様の年収150万円までは、ご主人は控除が38万円(変わらず)取れますので、103万円の壁は150万円に替わっていた!と言えます。ただし社会保険等の130万円の壁は変わらず存在します。社会保険等を奥様が別途負担するようになると夫婦の手取り合計が下がりますので、結局130万円の壁は越えてはいけないということになります。
また同時に配偶者特別控除には所得制限が設けられ、ご主人の所得金額が900万円超では配偶者特別控除が減額され、所得金額1,000万円超(給与収入のみの場合、1,220万円超)で控除が受けられなくなりました。
この配偶者特別控除の改正は平成30年からですが、この類の給与・扶養関係の控除を引き下げる動きは近年細かく少しずつ施行されています。さらに令和2年からはこのような改正もあります。
令和2年からの給与所得控除(基本は増税)
→ (1)一律10万円引き下げ
(2)控除を受けられる給与収入の上限を850万円に引き下げ(現行は1,000万円)
(3)控除額の上限を195万円に引き下げ(現行は220万円)
(4)給与収入から850万円を控除した金額の10%を、給与所得から控除(ただし本人または
扶養親族が特別障害者であるか、23歳未満の扶養親族がいる場合のみ)
令和2年からの基礎控除
→ (1)一律10万円引き上げ(ここだけ減税。ただし給与所得控除の(1)で行って来い・・)
(2)所得金額が2,400万円超の人は引き下げ、2,500万円超で0円に
そして上記2つの改正に伴い、扶養親族の合計所得要件を48万円以下(現行38万円以下)に引き上げました。ただし給与所得控除の引き下げがありますので、扶養親族の給与収入の上限は48万円+(65-10)万円=103万円で変わりません(^_^;)
それにしても、基礎控除までいじくるのか~という感じです。ああややこしいなあ(>_<)
親の持ち家に子がリフォームする場合の注意点
2018/12/23 15:44:40 節税
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いつもお世話になっております。あらためまして、新春のお慶びを申し上げます。
さて年末年始になりますと、暦の締めの関係等のため、住宅にからむ税の話題も増えて参ります。そしてよくある話の一つとして、「親と同居するのだが、そのままだと手狭だし、またお互いのプライバシーは尊重したいので、自分たちがお金を出して増改築・リフォームしてから住もうと思う」といった内容のものがあります。
じつはこのケース、税金に関して注意しないといけない点がいくつもありますので、ご紹介します。
一番注意しないといけないのは、その家が全て親の名義・持分の場合です。親名義の家の増築・リフォームのために住宅ローンを借りても、住宅ローン控除は使えません。住宅ローン控除の定義は「自己の所有する家屋への増改築」だからです。住宅ローン控除を使えないと、10年間で合計100万円以上も税金の控除が受けられない場合もあります。なんとかならないのでしょうか?
実はこのケースは、事前に家屋の一部を(贈与税の非課税範囲である)110万円以内の贈与により
親から子に名義変更しておくことで住宅ローン控除を使えるようになります。住宅ローン控除は、建物の持分が一部しかないから控除額も一部、ということはありません。全て対象になるので大丈夫です。贈与にかかる登記費用と不動産取得税の負担はありますが、住宅ローン控除でおつりがくる場合がほとんどです。
また次の問題として、親の持ち家に子が増改築して、結果親の持ち家の価値が増加することで、税務上は子から親への贈与があったものとみなされるという点があります。子の預貯金が親の不動産価値に変わるからです。
たとえば増改築前の家屋の価値が500万円で、持分は親4:子1(=親400万円、子100万円)だったとします。ここに子が1,500万円かけて増改築したとすると、増改築後の家屋の価値は2,000万円になります。持分が変わらなければ、親1,600万円、子400万円の価値を有することになり、親はお金を出していないのに家屋の価値が1,600万円-400万円=1,200万円増加したことになります。つまり子から親に1,200万円の贈与があったものとみなされます。贈与税額でいうと315万円位になります。
この贈与税を避ける手段として、同額の家屋持分を移転する方法があります。このケースですと、2,000万円×3/5=1,200万円分、すなわち家屋の持分5分の3を移転します。登記上は代物弁済、税務上は譲渡になります。これですと移転後の持分は親1:子4になり、親の家屋価値は2,000万円×1/5=400万円で、増改築前と増えていないので贈与税は生じません。ちょっとややこしいですね。
この場合でも登記費用と不動産取得税はかかりますが、(詳細割愛しますが)譲渡所得税も避けられます。ただシステムキッチンを新しいものに取り換えるなど、不動産の資産価値が増加したとは言えない程度のリフォームではこれにあてはまりませんが、その線引きは微妙なところではあります(特に相続発生時は注意が必要です)。
このように親の持ち家に子が増改築・リフォームする場合は税金上の留意点が多いです。同様のご計画がある場合は事前に担当者にご相談いただければと思います。
意外と知らない「印紙」について
2018/10/30 14:05:45 節税
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領収書や契約書に貼る「印紙」ですが、「なんでこんなものを貼らないといけないの?」と思われている方も多いのではないでしょうか?(私も今だにそう思っています(^_^;))今回は印紙について取り上げてみたいと思います。
まず印紙の意味ですが、これはもうズバリ「税金」です。一定の契約書や領収書を「紙で」作成したら、その作成に対して税金がかかります。だからその契約書等に印紙を貼っておかないと「納税漏れだよ」となり、貼っていないことが発覚すると後で3倍の印紙税を徴収される(割印の押印漏れは1.1倍)ことになります。
逆に言うと印紙には税金の意味しかありませんので、印紙を貼っていないからと言って契約書の効力には一切影響ありません。また印紙に半分印影がかかるように押す「割印」も、印紙を使いまわさないようにする、ということ以外の意味はありません。
なお先ほど「紙で」とわざわざ書きましたが、じゃあ契約書を電子文書で作ったらどうなるの?という質問には、「紙でないので印紙はいりません」という答えになります。これは印紙税法に「印紙を貼るのは書面の文書のみですよ」と書かれているからです。そのため、電子証明書を活用した電子書面の開発が徐々に進んでいます(それほど広がっていない気はしますが・・)。
またよく聞かれる質問の中で、「領収書に印紙を貼るのは5万円以上(平成26年3月31日までは3万円以上)ということだけど、この5万円は消費税込みですか?抜きですか?」というのがあります。答えは、領収書に書く金額が税込金額のみなら税込で判定、消費税を別記するなら税抜で判定となります。別記とは、例えば51,840円(消費税3,840円含む)のような書き方です。
漏れやすい印紙として、「継続的取引の基本となる契約書」があります。大きく「業務提携していきましょう」という内容の書面が多く、具体的な請負金額等が明記されないものがほとんどなので印紙を貼らなくてよさそうだと勘違いしがちですが、4,000円の印紙が必要です。意外と高額です!
また先の西日本豪雨により被害を受けた方が作成する印紙税については、一定の非課税措置が設けられました。すでに貼ってしまった場合でも税金の還付を受けられます。おおまかな条件は下記の通りですが、詳細は国税庁HPを見られるか、弊社各担当者にお問い合せください。
①不動産の譲渡または建設工事の請負に関する契約書であること
②り災証明等を受けた被災者が作成する契約書であること
③災害により損壊した建物の譲渡等や、代替建物の取得等にかかる契約書であること
子や孫にまとまったお金を贈与する方法
2018/06/02 13:10:56 節税
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「事前に預金の一部を子や孫に生前贈与して相続税対策したい」「子どもが結婚して家を買うので、その資金を援助してあげたい」など、まとまったお金を贈与したい、というご相談はいつも多くお受けします。今回はその方法についてまとめました。
まず、預金やその他の財産を生前に贈与した場合は、贈与税が課されます。あげた人ではなく、もらった人が贈与税を申告して納税しないといけません。そして、贈与税は(死後の贈与である)相続税よりもかなり高いです。たとえば1,000万円の預貯金を贈与した場合、贈与税は177~231万円かかります。ですので、相続税はかかりそうにないし、急いであげる必要がなければ、相続まで待つという選択肢もあります。
もっと早く贈与したい場合は、贈与税の「年間110万円までは非課税」の枠をうまく利用します。以前は非課税額は年間60万円まででしたが、平成13年以降はずっと110万円になっています。たとえば1,000万円を10年間に分けて贈与すれば、各年の贈与額は100万円で、非課税範囲内なので、結果無税で贈与ができます。
ここで注意しないといけない点があります。たとえば、「毎年孫の誕生日に100万円を10年にわたって贈与」したとします。先ほどの話ですと贈与税は0円になりそうですが、税務署はそうは見ません。「総額1,000万円を10年に分けて贈与するという贈与契約が締結されていた」とみなし、贈与した初年度に1,000万円の贈与契約があったとして贈与税(上記の177~231万円)が課されます(こういうのを「連年贈与」と言います)。
こうみなされないためには、①毎年、贈与する日をずらす、②(税額が0円でも)贈与税申告書を提出しておく、③可能ならば毎年贈与契約書を作成する、などの対策が必要です。
また他にもよくあるケースとして、「孫名義の預金をつくっておいてその口座に毎年贈与してあげる。その通帳は孫が成人したら渡すつもり」という方法です。これにも注意が必要で、相続税の調査等があった際に税務署は、「それは孫の名義になっているだけの被相続人の預金ですね(いわゆる「名義預金」)、とみなし、贈与したつもりなのに改めて相続税が課される場合があります。
こうならないためには、①通帳の存在を孫に教えておく、②孫の口座用の銀行印は別途つくる、③時々その口座からお金をおろしたりして、贈与専用口座にしない、などの対策が必要です。可能ならば、普段使いの孫名義口座に直接贈与したほうが良いです。
なお、住宅を買うための資金を贈与する場合や、教育資金を贈与する場合には、別途贈与税の非課税の特例があります。たとえば平成30年では住宅資金贈与の贈与税非課税の特例として、上記110万円の非課税枠と別に、700万円または1,200万円の非課税枠の適用を受けられる場合があります。詳しくは担当者にお問い合せください。