損したのに課税される?仮想通貨の「総平均法」
2021/06/29 15:13:12 株式投資
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世界各国でコロナによる経済腰折れを防ぐべく大規模な財政出動がなされた結果、その資金の一部は株式市場のみならず、金(きん)などの資産や、果ては高級時計や絵画などにも投資・投機資金として流れ、高騰の一途をたどって来ました。最近ではコロナ後の景気V字回復は既定路線で、その後のインフレ懸念で利上げが早期に行われるという警戒感が市場の話題の中心となりつつある状況です。
ところで、一時はほぼ話題に上がらなくなった仮想通貨(=暗号資産)も昨年12月頃から大幅上昇しており、例えばビットコインは昨年秋100万円→今年4月高値700万円→6月400万円、と波乱の動きになっています。こうなると3年前同様に仮想通貨の利益を確定申告する方が多数出てくると思うのですが、当時と比べて確定申告時の計算方法も整備が進んでおり、国税庁もかなり詳細なQ&Aや計算用のエクセルシートまでHP上で発表しております。
基本的な計算方法が3年前と変わった訳ではないのですが、1点気になったのは「評価方法の届出がない場合は、総平均法で計算する」(令和1年度より)という部分です。
計算方法には移動平均法と総平均法があり、移動平均法は売買の都度平均単価を計算し直していく方法で、総平均法はその1年間で買った金額と数量を全部足し算して、年末に初めて平均単価を出す方法です。通常トレードする場合はその都度利益が出たか知りたいので、移動平均法の計算を(自然に)行っているのですが、怖いのは移動平均法だと損してるのに総平均法だと利益が出てる計算になる可能性があることです。
例えば①500万円で1BTC買い、②450万円で1BTC売り、③300万円で1BTC買い(保有中)の場合、移動平均法では①と②だけを考えるので50万円の損になります。ところが総平均法だと(①+③)÷2の400万円が平均単価となるので、逆に50万円の利益になります。
もちろん逆のケースも起こりうるのですが、いずれにせよ総平均法は売買感覚に合わないので、仮想通貨の申告をされる場合は移動平均法の届出を合わせて出されることをおすすめします。確定申告書と同時に、翌年3/15までに提出すればOKです。
野村證券の多額損失から見える、過剰流動性の危うさ
2021/03/31 16:04:23 株式投資
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野村證券が3/29に、米国の子会社での金融取引で20億ドル程度の損失が発生する可能性がある、と発表しました。20億ドルは1ドル110円で換算すると2,200億円です。この金額自体は、野村證券(正確には野村ホールディングス)は2021年3月期に5,000億円程度の税引前利益の予測がされていることから、直ちに赤字転落とか、経営危機とかいったことになる金額ではありません。
しかし同じ取引先の金融取引で、世界大手のクレディ・スイスでも10億ドル~40億ドルの損失が発生するなど、その影響拡大を懸念する声が出てきています。極端な話、リーマンショックの引き金のようにならないか、ということです。
問題となった取引先は、米国のアルケゴスといういわゆるヘッジファンドで、保有資金の何倍もの取引額(=レバレッジ取引)で株式を運用していましたが、保有株が急落したことで債務不履行になり保有株の強制投げ売りが起こり、野村證券などが証拠金(=レバレッジ取引をするための保証金)の回収ができない可能性が高くなった、ということです。
株価がこれだけ上がってくると、極端にリスクの高い買い方をしてくる投資家が出てくるのですが、実際には株価は短期的には上がったり下がったりしているわけで、極端な買い方だと短期間でも急激な下落があればすぐ耐えきれなくなるわけです。
最近の株価は高値圏で乱高下しております。世界各国がコロナ対応のために過去に前例がない規模でお金を市場にばらまいたため、行き場のないお金が株式などの金融資産の価格を大きく押し上げているのですが、世界経済の回復期待だけで評価するには株価はすでに高すぎる域まできており、目先の上昇に乗っかるだけのような、逃げ足の早い資金が多くなっています。
また、今年1月に起きたゲームストップ事件をご存知でしょうか?米SNS「レディット」の掲示板で結託した個人投資家がゲームストップという米小売会社の株式を一気に買い上がり(1ヶ月弱で約18倍まで株価上昇)、同株式を空売りしていた米大手ヘッジファンドに数千億円の損害を与えて破産寸前まで追い込んだ、という事件です。ちなみにこの事件はヘッジファンドに不信感のある個人投資家が、狙ってヘッジファンドを潰しにいったと言われています。
こんなことも、市場にお金が極端に出回ってしまっている(=過剰流動性)からこそ起こるのです。
要するに今はすでにバブルなのです。日本では賃金上昇は一向に起こらないので実感はないですが、世界のお金の動きは明らかにバブル的です。バブルはすぐにではないにせよ、いつかははじけます。また政府も、多額の財政支出を増税という形でいつかは回収に来ます。アンテナを張って、危機に備えましょう。
半沢直樹で思い出した、JALの破綻と再生
2020/09/01 13:39:50 株式投資
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今シリーズから半沢直樹を見始めましたが、すっかりはまっております。私の息子いわく「悪役をこんなに好きになったドラマは初めて」らしく、大和田常務とか、シリアス演技なのにギャグ化してくるのも面白いですね。
第5話からの帝国航空の話は日本航空(JAL)がモチーフになっていますが、JALの経営破綻はそんな昔の話ではないので、記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。JALは2010年に会社更生法の適用を申請して、負債総額2兆3,000億円以上で倒産。ところがわずか2年後の2012年9月には再上場を果たして、コロナ禍で業績が悪化するまでは毎年1,700億円以上の営業利益を叩き出す超優良企業に生まれ変わった、という激動の歩みをしている会社です。
当時は民主党政権で、前原国土交通大臣(例の女性大臣のモデル?)が再生タスクフォースを結成し、その後企業再生支援機構に引き継がれ、金融機関に5,000億円超の債権放棄をさせ、3,500億円の公的資金を注入し、株式を100%減資しました。
今サラッと100%減資と書きましたが、どういうことかわかりますか?100%減資なので、資本金を0円にするということです。それはつまり、株主の持っている株式がただの紙切れに変わったことを意味します。再生に向けて経営資源を少しでも維持するために、株主は全員切腹させられた、ということですね。
JALが再生したのは京セラ創業者の稲盛和夫氏が会長に就任して経営改革を図り、企業風土が変わったことが大きいと言われています。ドラマ同様、大幅な人員削減や企業年金の削減もあったようですね。日本を代表する企業ですし、このコロナ禍もなんとか乗り越えてもらいたいです。
ところで、当時は2009年の秋ころには、JALはもう破綻するだろうという話がかなり大きくなっていて、私もわかる範囲で色々調べた結果、「これは絶対、すぐにでも破綻するな」と思っていました。
そして当時の私の株式の取引履歴を見てみると、私は10月ころからしつこく空売りを繰り返していました。「空売り」とは株価が下がるほど儲かる仕組みの取引で、2009年10月始めの株価は1株140円くらいで、破綻して1円(紙くず)になると1株につき139円、10,000株なら139万円儲かるな、という算段でした。
ところが、たしか当時は「公的資金で、政府は何が何でもJALを殺さない」「救済する企業株主が現れて株価は急回復する」みたいな意見も根強く、そのうち「すぐにでも紙くずになりそうなのに、何でこんなに株価が下がらないんだ」と疑心暗鬼になり、自分の読みが誤ったのだろうと思って12月には完全に撤収しました。その後2010年1月19日に会社更生法を申請しましたので、なんて私には才能がないのだろうと思ったことを思い出しました。
コインチェック580 億円流出問題と「貨幣論」
2018/02/02 12:39:02 株式投資
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年初めには、本当は「仮想通貨第2章」みたいなタイトルで書こうと思っていましたが・・・。この1ヶ月でビットコインなどの仮想通貨には様々なニュースがありまして、まさに激動の1ヶ月でした。
最大のニュースは、1/26 に仮想通貨取引所コインチェックから当時580 億円相当の「XEM(ネム)」が不正送金された事件です。要はハッカーから盗まれたのです。コインチェックは国内最大級の取引所で、ビットコインを含む13 種類の仮想通貨が取扱いされています。
まず驚いたのがその金額です。ネムはこの13種類の仮想通貨のうち時価総額の大きさは6 番目です。6 番目の仮想通貨の保有高が580 億円ですから、全ての仮想通貨の保有高の合計は1 兆円を超えていてもおかしくないと思います。
さらに数日後にコインチェックは463 億円を自己資金で顧客に弁済すると発表しました。コインチェックは運営を開始してまだ3~4 年の会社ですよ!ベンチャー企業でこれはすごいです。
ただ考えてみますと、コインチェックでは取引の際に3~5%のスプレッド(実質、手数料みたいなもの)を取ります(ビットコインは無料)。月間取引高が4兆円を超える月もあったらしいので、単純にこの半分がビットコイン以外としても、2兆円×3%=600 億円の売上高が1ヶ月であった計算になります。これなら確かに何とかならなくもないですよね。月間粗利益600 万円の会社が463万円なら、無理すれば返せるかなと。
日本は今、世界で最も仮想通貨を取引している国と言われています。以前は中国でしたが中国が昨年全面的に仮想通貨取引を締め出す動きをしましたので、今は日本です。日本政府は仮想通貨取引を締め出すことはせず、昨年から仮想通貨交換業者を認可制にしました(コインチェックは申請中だったことも問題になっていますが)。正式に「貨幣である」とも認めました。世界に先駆けてです。つまり政府が監視をしながらも、適正に市場を守っていこうという姿勢が見え隠れします。ここからは私の妄想ですが、産業革命から続いた産業が衰退した際に金融大国として復活したイギリスよろしく、日本は仮想通貨大国として君臨するという狙いがあるのではないでしょうか。
仮想通貨に批判的な方の理由の一つとして、「そんな価値のないものに値がつくわけがない」というものがあります。私はこれには反対です。貨幣の歴史でいいますと、もともと貨幣は物々交換の時代に、「肉一切れと米どれくらいが平等な交換なのか」という尺度として誕生していきました。銅銭1枚が肉一切れと同等で、かつ米ざる1杯分が同等なんですよ、といった感じです。19世紀になると金本位制ができ、政府は金(きん)を保有し、その価値と同額の紙幣を発行しました。紙幣を金の価値で保障するのです。やがて紙幣は金の裏付けがなくとも政府の保障で発行するようになりました。今では紙幣そのものに価値があるとみんな理解しています。
ところで金(きん)って何で価値があるのですか?ピカピカしてきれいだけど、食べれないし、特別何かの材料に重宝されるわけでもないです。紙幣にいたってはただの紙です。つまり貨幣とは万人がその価値を認めるかどうかであって、貨幣そのものが紙であるとかデジタルであるとかは本質的には関係ないのです(偽造や盗難などの安全性の問題は別ですよ)。
金融危機「7年周期説」
2016/06/02 14:58:24 株式投資
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金融危機は7年おきに起こる、という金融危機「7年周期説」というものがあります。かなり影響が大きかったリーマン・ショックは2008年に起きました。リーマン・ショックに前後して、日経平均株価は1万8千円程度から7千円割れにまで暴落しました。実体経済にも相当の影響が出ました。
過去を見てみますと、その7年前の2001年は、ITバブル崩壊と、合わせてアメリカ同時多発テロが起きています。さらには1994年メキシコ通貨危機、1987年ブラックマンデーとさかのぼります。逆に最近では、昨年2015年には中国の景気失速懸念から世界的に株価が暴落しました(チャイナショックとも呼ばれます)。
ここで考えないといけないのは、7年という数字がどうこうではなく、経済は何年かの周期で上がったり下がったりを繰り返している、ということです。アベノミクスによる好景気(?)は、昨年の中国減速でいったんは終息しているとみるべきですし、逆にチャイナショックはアメリカの好景気がある程度打ち消してくれているため、もう少し景気が減速しても、それなりの時期には落ち着く(底を打つ)とみるべきだと思っています。