リーマンショック級? トランプ大統領の相互関税
4月2日、世界中に激震が走りました。トランプ大統領が全ての国や地域に一律10%、日本に24%、中国には34%(その後145%にまで引き上げ!)等の関税を課すと発表しました。想定外に高い関税率の発表に、世界中がパニック。そして株価も急落しました。
「相互」関税ということですが、そもそも日本はアメリカに同程度の関税を課しているのかと言うと、決してそんなことはありません。アメリカは貿易赤字が大きいので、それを減らしたという目的があるようです。ただアメリカは金融やITなど関税の関係ない分野で稼いだお金でいろいろなものを輸入しているのですから、貿易赤字になるのは当たり前です。それを「お前らのせいだから今から関税かけるね」は無理筋もいいところなのです。
しかし、この相互関税はアメリカにとって本当にプラスになるのでしょうか?関税はアメリカの輸入業者が納めます(この関税率だと関税総額は2年で100兆円になるとか!この資金を原資に所得減税を実施するのが目的という説もアリ)が、輸入業者はその納税分を商品価格に上乗せします。するとアメリカではインフレがさらに加速します。そして価格が高くなりすぎてモノが売れなくなると経済は冷え込みます。インフレになりながら景気が後退する「スタグフレーション」は、経済状況としては最悪です。また日本企業もアメリカに輸出するモノが売れなくなるので、日本経済も悪化します。世界経済はアメリカを中心に回っていますので、世界中がリーマンショック級の不況になる恐れすらあります。
また「関税が嫌ならアメリカ国内で工場を作って生産しなさい」とトランプ大統領は言いますが、もちろんそんなすぐに工場を作ったり移せるものではありません。例えばアップルはアメリカで使われるiPhoneの約80%を中国の工場で作っています。人的資源を含む複雑なサプライチェーンをすでに中国国内に構築しているのですから、これを全てアメリカ国内に移すなど、やはり無理筋(4月25日に「生産をインドに移す」との発表あり)です。トランプ大統領の真の目的が不明瞭すぎます。目指すゴールを明確にしない指導者というのは、経営方針のない経営者と同じで、ついて来ている者を路頭に迷わせてしまうのではないでしょうか?
なお、トランプ大統領は4月9日にこの相互関税を90日間の停止すると発表しました(中国を除く)。トランプ大統領は今年借換の生じる9.2兆ドルもの米国債の利率を下げたいので、相互関税発表による株式暴落→米国債上昇→米国債金利低下、という流れを狙ったという説があります。経済の教科書的には株価が売られると相対的に国債が買われ、人気化した国債の金利は低下する、ということになります。
ところが、実際には株価の暴落と並行して米国債価格も急落してしまいました。すると意に反して米国債の金利は急激に上昇しました。この米国債価格急落の原因は、日本に次ぐ米国債保有額第2位の中国が、報復として叩き売ったから、という説があります。何にせよ、この米国債金利の急上昇に耐えられなくなったトランプ大統領は、やむをえず90日間の相互関税停止を発表した、というわけです。
90日経過後の世界経済はどうなっているでしょうか。リーマンショック級の経済崩壊を引き起こした大統領、という汚名を着ることをトランプ大統領は望んでいないでしょうから、アメリカにとって有利な何らかのディールが成立すれば、相互関税は引くのかもしれません。
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