取得費が不明な場合に、5%以外で申告する方法
2026/04/01 15:11:44 節税
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個人が不動産を売却した場合は譲渡所得として他の所得とは区分され、その利益に対して一律20.315%(短期譲渡所得該当する場合は39.63%)の税率により所得税と住民税が課されます。譲渡所得は「売値-買値-諸経費」で計算されますが、例えば祖父母が土地を何十年も前に購入していて売買契約書を紛失している場合など、買値がわからないケースもよくあります。その場合は「概算取得費」として買値を「売値の5%」とみなして計算する特例が認められており、買った時の契約書がない場合は基本的にこの概算取得費を使って税金計算をします。
ただこの場合だと(諸経費を除くと)結局売値の95%に対して20.315%の税金が課される計算になる(売値-売値×5%=売値の95%)ので、1,000万円で土地を売った場合税金が193万円くらいかかることになります。本当に、他に方法は無いのでしょうか?
実は売買契約書が無い場合でも、概算取得費以外の計算で買値を算定する方法があります。まずは売却した不動産の登記簿謄本を取得した上で、その不動産をいつ購入したか確認します。その上で、以下の書類で確認した金額を、買値と推測して申告します。
①購入日前後の預金通帳に、購入価格の振込であろう動きがある場合、その振込金額
②購入日前後に金融機関から借入がある場合、その金銭消費貸借契約書の借入金額
③購入日に抵当権の設定がされている場合、その抵当権設定額
④購入当時の、不動産に関するチラシや広告に記載されていた金額
⑤不動産業者から購入した場合、その業者の保管書類や証言など(業者に購入額を証明してもらう場合も)
⑥土地の場合、購入当時の固定資産税評価額や路線価を基に、買値(時価)を推定した金額
⑦土地の場合、市街地価格指数を基に、買値(時価)を推定した金額
上記のうち複数の資料があれば、それらを組み合わせて、より信憑性の高い金額を算定していきます。
ただしこれらはいずれも正確な金額ではありませんので、「少なくともこのくらいの金額は出して買っているはずだ」と主張して申告するものになります。あくまで税務署が正式に認めている算定方法ではありませんので、個別に判断された結果、認められない可能性もあります。例えば⑦などは、平成12年の大阪国税不服審判所の採決により合理的だと認められたのですが、その後東京などの審判所で同様の主張を棄却されたケースも散見されます。そのためこれらの方法は、「可能な限り多くの根拠を集めて、その上でリスクを覚悟の上で申告する」というようなものになります。
ですのでこのような方法での申告の際にはご自身のみで判断されず、税理士や担当者にご相談いただいた上で、最終的に本当にこの方法で申告すべきかどうかを判断していただければと思います。
優遇されている退職所得の税金
2025/12/01 10:29:15 節税
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退職所得とは具体的には企業からの退職金、小規模共済の一時金、iDeCoの一時金などがこれにあたりますが、退職所得は給与所得などと比べて大幅に税金が軽減されるように優遇されています。退職所得の計算は、退職所得=(退職金-退職所得控除)×1/2となっており、まず勤務年数や加入年数が20年以下の場合は40万円×勤続年数、20年超の場合は800万円+70万円×(勤続年数-20年)の金額が退職所得控除として差し引かれます。要は1年ごとに40万円、70万円が追加で非課税になっていきます。その上残った金額が2分の1されますので、残額の半分も非課税になる、ということになります。
さらに退職所得は「分離課税による累進課税」になります。どういうことかと言うと、例えば給与所得等が3,000万円と退職所得が300万円あった場合に、給与所得等は累進課税により40%の所得税が課されますが、退職所得は他の所得金額は無視して300万円に対する累進税率(この場合は10%)の所得税率しかかかりません。このように退職所得には①退職所得控除、②2分の1課税、③分離課税による累進課税という三重の優遇措置があるわけです(一部例外はあり)。
そのため現役世代にとって退職金を準備することは、「将来の備え」と「節税」の両立になります。iDeCoは65歳未満の方は原則誰でも加入できますので、会社の退職金にプラスして加入することで掛金を毎年の所得控除にしつつ、将来安い税額で一時金を受け取ることができます。個人事業主や法人役員ですと小規模共済をつかって退職金準備ができますし、法人役員はさらに自身の退職金原資を生命保険や倒産防止共済をつかって積み立てることで社会保険料の節約にもつながります。
注意点としては退職所得控除には重複期間の調整というものがあり、退職金を受け取った際にその年の4年前までに他の退職金を受け取っていた場合は、前回の勤続期間・加入期間と重複している期間の退職所得控除が原則受けられなくなります。この重複期間の調整は少し複雑なので詳細は割愛しますが、退職金を受け取る際は前回の退職金から5年以上空いているかどうかを意識しておく必要があります。
さらに「老後資金は自分自身でも準備せよ」ということで広がっていったはずのiDeCoにいたっては徐々に改悪が続いており、令和8以降はiDeCo→退職金の順番に受け取る場合は10年以上、退職金→iDeCoの順番に受け取る場合は20年以上空いていないと後で受け取ったほうの退職所得控除が調整されます。10年や20年空けるのは実質ほぼ不可能であり、「iDeCoは広めるが税金の優遇はしません」という日本政府からのメッセージでしょう。
退職金を自分で準備する方法
2023/03/01 17:56:31 節税
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退職金は、数十年働いたことに対する自分自身への最後の対価です。リタイア後のことを考えるといくらあってもいい!と思いますが、経営者・事業者の方は、自分で準備しておかないと誰も準備してくれません。
もちろん給与・賞与の一部を貯蓄していく形でもいいのですが、退職金として準備するほうが税務的なメリットは大きくなります。①一定の方法で準備(積立)することで、その積立金が経費や所得控除になる、②退職金として受け取ったときの税金が優遇されている、③受け取った退職金は社会保険料等の対象にならない、などです。
とは言え、中退共や特退共といった毎月退職金を積み立てていく制度は、従業員さんには使えても経営者自身には使えませんので、下記の3つの商品を組み合わせて積み立てます。
(1)倒産防止共済を使う
意外に思われるかもしれませんが、倒産防止共済は退職金準備に使うほうがいいと思います。倒産防止共済は年額240万円、累計800万円をマックスに積み立てができ、積み立てなのに全額経費にできるので今や数少ない節税商品の一つですが、最大のデメリットは解約時に全額利益に上がることです。適当な時期に解約してしまうと、解約時に節税した税金を全部吐き出すことになるので、実は使い勝手が難しいのですが、これを退職金積立金と位置づけてしまいます。
800万円まで積み立ててずっと置いておき、退職金を支給する時にこれを解約して全額退職金に充てることで、解約益が全額退職金という経費で相殺され、解約にかかる税負担が発生しません(法人の場合)。また途中での一部解約はできませんが、積み立てておけば契約者貸付も受けられるので、一時的な運転資金借入の担保にもなります。
(2)生命保険を使う
800万円ではとても足りない!という場合には退職金の2階部分という意味合いで法人契約の生命保険を使います。なだらかに解約返戻率が上がっていき、リタイア予定時に返戻率がピークにくる長期平準定期保険などがいいと思います。退職金を3,000万円準備したいなら、生命保険で2,200万円を積み立てるイメージです。以前ほどではないにせよ一部節税効果もありますし、生命保険本来の目的である死亡保障等がつくので、経営リスクも減少できます。トータルメリットが大きいので、法人契約の生命保険は一本はほしいです。ただし損金性のないドル建て変額保険などを勧められた場合は、本当に今ベターな保険商品なのか検討する必要がありますので、契約前に一度ご相談いただければと思います。
(3)小規模共済共済を使う
うちは法人じゃない!という方は小規模共済で積み立てます。こちらも全額所得控除になる積立金です。不動産貸付業の個人や、法人の役員(医療法人、NPO法人等は不可)でも加入できます(契約自体は個人)。小規模共済は一括でも年金形式でも受け取ることができます。
「収入300万円以下は雑所得」の意味するところ
2022/09/01 15:39:56 節税
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国税庁が8/1に出した所得税の通達(法令解釈)の改正案が話題になっています。通達は税法そのものではないですが、「国税当局としてはこう解釈して税法を運用しますよ」という指針になります。そして話題になっている内容は、「収入金額(=年売上高)が300万円以下のものは、原則雑所得」という一文です。
今まで個人で事業・副業をしていて確定申告をする場合、それが「対価を得て継続的に行う事業」の場合は「事業所得」、そこまでではないものは「雑所得」と区分されていました。じゃあ具体的に事業所得と雑所得の境目ってどこよ?と聞かれると、はっきり決められていなかったので、実際のところ本人が「これは事業よ」と言えば事業所得、みたいなわりとアバウトな感じもありました。今回、今さらながらその境目が示された形です。(なお所得税の取り扱いなので、法人には関係ありません。)
では事業所得と雑所得で何が変わるのかという点ですが、両者とも売上から経費を引いた残りが利益で、それに対して累進課税で所得税が課される、という部分は同じです。異なるのは、雑所得の場合①青色申告特別控除(10~65万円)が受けられない、②青色事業専従者給与が支給できない(白色申告の事業専従者控除も取れない)、③損失が出た場合他の所得と損益通算(=相殺)ができない、という点になります。他にも純損失の繰越控除ができない、30万円未満の少額減価償却資産の特例が使えない、などもあります。
①②の意味するところは、事業を行って利益が出た場合、「がっつりやらないと税金計算の時の優遇を受けさせないよ」ということになります。日本政府は副業を推進してるのだからがっつりやりなよ、と言いたいのかもしれませんが、努めている会社が副業禁止でこっそりやっている程度では税金は優遇されない、という不公平感が出る気がしますね。
また③は流行りの「サラリーマン節税」を封じる意味があります。書店でこれ関連の書籍がたくさん並んでいますが、例えば売上を10万円、経費を(入れれるだけ入れ込んで)200万円計上し、赤字の△190万円を給与所得と相殺する申告をして、給与から天引されていた所得税を還付してもらう、みたいなスキームです。ほぼ税金還付を目的にしている事業なんか、事業じゃないだろう!という税務当局の言いたいことはわかりますが、事業の黎明期で本当に赤字がかさんでいる場合も杓子定規に相殺を認めないのか、という問題も出てきます。
なおこの内容は8/31までパブリックコメントを募集しており、その内容によっては原案が修正される可能性があります。また改正が施行された場合、令和4年分以後の所得税について適用されます。つまり令和4年1月以降の事業までさかのぼって影響を受けますので、ご注意ください。
確定申告しないほうがいい人、したほうがいい人
2020/02/03 18:02:54 節税
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今年も確定申告の時期が近づいて参りました。今回は、そもそも確定申告って何なの?誰がしないといけないの?というところからお話させていただきます。
法律的には「確定申告」という用語は法人の決算にもあてはまるのですが、一般的には確定申告といえば個人の申告です。毎年3月15日までに、個人の前年1年間に得た全ての所得を合算して、所得税額を税務署に自己申告して納めます。住民税や事業税、国民健康保険料などもその申告をもとに自治体が計算します。
ただし1か所からの給与収入しかない方は、会社が年末調整をしてくれます。これは確定申告を会社が代わりにやってくれるようなもので、この方は確定申告の義務はありません。
個人で商売をされている方や、賃貸不動産のオーナーなどは確定申告をしないといけない、というのはわかると思いますが、中には微妙なケースも出てきます。例えば、会社勤めで基本的には1か所からの給与収入なんだけど、他に少し副収入もある、という場合です。どのくらい副収入があれば確定申告しないといけないのかご存じですか?
所得税法の規定では、「メインの給与以外の給与収入」+「給与・退職金以外の所得」が20万円を超えると確定申告をしなければならないとされています。例えば副収入が18万円の給与収入のみなら確定申告をしなくていいし、給与収入が25万円ならしないといけません。また、個人年金収入が120万円あっても所得換算で18万円なら確定申告をしなくていいし、会社に内緒でこっそりやってるネット販売事業の売上が300万円あっても経費を差し引いたら利益(所得)が15万円だ、という方も確定申告不要です。下線部の「収入」と「所得」は、このような違いが出てくるので注意が必要です。ほんとは確定申告しなくていいのに、してしまった結果追加の所得税が出たら、それは納めないといけなくなりますので。
ところで、確定申告をしなくていいことが分かったから、はい確定申告さようなら、と言うのは少し早いです。確定申告の義務はないが、あえてすることで税金の還付や、住民税の軽減につながるケースが多々あるからです。
医療費控除など、年末調整ではできない控除があるから、というのが一番わかりやすいですが、それ以外でも例えば先ほどの、給与の副収入が18万円というケース。給与からは通常源泉所得税が天引きされていますので、合算して所得税を再計算した結果、副収入の所得税は引かれすぎだから還付される、というケースがあります。この場合は、まず計算してみて、税金が還ってきそうなら申告する、税金が追加になりそうなら申告をやめるのが正解です。
最後に、最近よくある注意点が、ふるさと納税のワンストップ特例です。これは5か所までのふるさと納税につき確定申告不要で住民税の控除をしてくれるのですが、医療費控除などのふるさと納税に関係ない確定申告をした場合でもワンストップ特例が無効になります。確定申告時にふるさと納税の寄付金控除も忘れず申告に加えてください。