YouTubeの視聴履歴で重加算税
2023/05/01 14:35:50 税務調査
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関東でこんな税務調査事例がありました。ユーチューバーが動画投稿による広告収入等約3,600万円を全く申告しておらず追徴課税されたのですが、納税者は当初国税局に対し「確定申告が必要なことを知らなかった」と説明したそうです。ところが国税局は、納税者が「税務調査を受けたらどう対応するか」という内容の動画を閲覧していた履歴と、「確定申告が必要である旨の動画配信サービス会社からの受信メール」の証拠を突きつけ、納税者に重加算税(=40%税金上乗せ)の処分を下しました。
この事例のポイントは、国税局がパソコンの閲覧履歴や受信メールを取得したことに正当性があるかどうかです。マルサの強制捜査ですとパソコンも押収されているでしょうからアウトですが、一般の任意調査ですとこれらの内容を調査官が強制的に確認する権限は、今のところありません。勝手に調査官が確認していたのなら違法調査の可能性があります。
税務調査では、調査官からの「パソコン見せて」の要求は要注意です。請求書のエクセルデータを確認したいと言いながら、このような別の証拠を横目で探している可能性があります。先ほど「今のところありません」と書きましたが、来年から電子帳簿保存法が本格的に施行されます。そうなると例えばEメール本文で代金請求があった場合、そのメールデータ自体の保存義務があり、税務調査で閲覧を求められれば拒否できません。電子帳簿保存法はデータのままでも保存できる便利な改正などではなく、税務当局にこのようなパソコン上の証拠を閲覧する権限を与えるためのものだと解釈すべきでしょう。
インボイス制度のせいで電気代値上げ
2023/04/03 15:41:09 経済一般
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今年10月より導入されるインボイス制度。事業者が登録申請することで、今まで消費税の免税事業者であった者までが消費税の納税義務を負うことになり、増税の影響を受けるわけですが、インボイス制度の影響はそんな直接的なものばかりではありません。一例を挙げますと、インボイス制度のせいで電気代が今後値上げされます。
現在家庭の太陽光発電システムなどで発電した電気は、電力会社が買い取ることが義務付けられています。電力会社からするとこの買い取りは仕入れになり、その電力を販売(企業や一般家庭に送電)します。
電力会社が買い取る電気は一般家庭からが多く、そのうち大半はサラリーマン等の家庭であり事業者でないため、インボイスの登録をしていません。そのため電力会社は10月以降買い取った電力代金の大半につき仕入税額控除ができないので、消費税の納税負担が増加することになります。
まあこんなことは電力会社に限ったことではなく、多くの業種でこのような税負担増加が生じるのですが、なんと資源エネルギー庁はその税負担を電気代値上げで穴埋めする方針だと発表しました。
要するに国はインフレ対策をするわけでもなく、景気浮揚策を講じるでもなく、増税とインフレ誘発のダブルパンチで、国民から搾り取れるだけ搾り取ろうというわけです。ただでさえインボイス制度自体が大がかりの割に対した制度設計のされていない愚策なのに、制度導入により派生的に生じるインフレ影響も読めないという無能ぶりをいかんなく発揮したことになりますね。よその国なら、反対派に国会を襲撃されてもおかしくないと私は思いますが、まあ日本は平和でよかったですね・・。
退職金を自分で準備する方法
2023/03/01 17:56:31 節税
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退職金は、数十年働いたことに対する自分自身への最後の対価です。リタイア後のことを考えるといくらあってもいい!と思いますが、経営者・事業者の方は、自分で準備しておかないと誰も準備してくれません。
もちろん給与・賞与の一部を貯蓄していく形でもいいのですが、退職金として準備するほうが税務的なメリットは大きくなります。①一定の方法で準備(積立)することで、その積立金が経費や所得控除になる、②退職金として受け取ったときの税金が優遇されている、③受け取った退職金は社会保険料等の対象にならない、などです。
とは言え、中退共や特退共といった毎月退職金を積み立てていく制度は、従業員さんには使えても経営者自身には使えませんので、下記の3つの商品を組み合わせて積み立てます。
(1)倒産防止共済を使う
意外に思われるかもしれませんが、倒産防止共済は退職金準備に使うほうがいいと思います。倒産防止共済は年額240万円、累計800万円をマックスに積み立てができ、積み立てなのに全額経費にできるので今や数少ない節税商品の一つですが、最大のデメリットは解約時に全額利益に上がることです。適当な時期に解約してしまうと、解約時に節税した税金を全部吐き出すことになるので、実は使い勝手が難しいのですが、これを退職金積立金と位置づけてしまいます。
800万円まで積み立ててずっと置いておき、退職金を支給する時にこれを解約して全額退職金に充てることで、解約益が全額退職金という経費で相殺され、解約にかかる税負担が発生しません(法人の場合)。また途中での一部解約はできませんが、積み立てておけば契約者貸付も受けられるので、一時的な運転資金借入の担保にもなります。
(2)生命保険を使う
800万円ではとても足りない!という場合には退職金の2階部分という意味合いで法人契約の生命保険を使います。なだらかに解約返戻率が上がっていき、リタイア予定時に返戻率がピークにくる長期平準定期保険などがいいと思います。退職金を3,000万円準備したいなら、生命保険で2,200万円を積み立てるイメージです。以前ほどではないにせよ一部節税効果もありますし、生命保険本来の目的である死亡保障等がつくので、経営リスクも減少できます。トータルメリットが大きいので、法人契約の生命保険は一本はほしいです。ただし損金性のないドル建て変額保険などを勧められた場合は、本当に今ベターな保険商品なのか検討する必要がありますので、契約前に一度ご相談いただければと思います。
(3)小規模共済共済を使う
うちは法人じゃない!という方は小規模共済で積み立てます。こちらも全額所得控除になる積立金です。不動産貸付業の個人や、法人の役員(医療法人、NPO法人等は不可)でも加入できます(契約自体は個人)。小規模共済は一括でも年金形式でも受け取ることができます。
二宮尊徳の言葉から思うことあれこれ
2023/02/01 17:44:22 経済一般
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突然ですが、二宮尊徳(二宮金次郎)をご存知ですか?薪(まき)を背負いながら本を読んでいる銅像が小学校にありましたよね、あの方です。「勤勉」のイメージはあるものの、何をした人か知らないという方も多いと思いますが、江戸時代後期に荒れた農村の復興を指導し、また道徳と経済の両立を説いた「報徳思想」を唱える思想家でした。その二宮尊徳の残した言葉の中に、こんな名言があります。
「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である」
かなりストレートかつ本質をついた言葉だと思います。企業・事業者の目的は利益を出すことであるのに間違いはありませんが、経営理念もなくただただ顧客から売上を搾取するような行為は犯罪と同じだ、と断じています。顧客に、ひいては社会に役立つ商品・サービスを提供し、それに見合う対価を得ながら発展することこそ企業の存在意義だということですね。企業が継続的に発展していくには、顧客・社会に貢献するという視点・観点を忘れることがあってはならないと私も思います。
また後半の言葉も厳しいですね。いくら顧客・社会のためという理念があっても、必要以上な安売りや過剰サービスで企業が疲弊し、利益を残すことができなければ永続的に良質な商品・サービスが提供できなくなり、結果的に顧客・社会を裏切ることになる。永続的な実現ができないような経済活動は結局寝言(=意味がない)と断じています。
ところで、最近賃上げの話題が多くなっております。ファーストリテイリング(ユニクロ)がこの春から最大40%の賃上げを行うなど、大手企業で賃上げの動きが相次いでいます。たまった内部留保を活用して、有能な人材を確保していくという動きは日本全体にとっても良いことだと思います。賃金が上がる→購買意欲が増える→企業の業績が良くなる→賃金が上がる→・・の好循環がなかったから、日本は30年間経済成長しなかったわけですから。
一方中小企業はどうでしょうか?賃上げできますか?どうしても必要な人材には(引き止めという意味も含めて)賃上げが必要になってくると思います。そうなると、企業に必須でない人材の賃上げまでする余力がない中小企業では、給与格差が拡大していくのかなと思います。
企業としては、従業員の給与を絞って絞って利益を搾取するようでは最終的には必要な人材まで流出することになり、継続的な発展はないでしょう。かといって大盤振る舞いばかりしていては資金がもたなくなり、結局最終的には職員を失業させてしまうことになるかもしれません。まさに二宮尊徳の言う通りになってしまいます。給与体系の見直しが必要でしょうし、人材配置や社内業務の合理化、また商品・サービスの差別化など、やるべきことをやる企業とやらない企業との格差もまた、拡大していくのだと思います。
新NISAと暦年贈与の改正を解説!
2023/01/05 16:03:27 節税
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令和4年12月16日に令和5年度税制改正大綱が発表されました。今回の目玉は2つありまして、「新NISA」と「暦年贈与の見直し」です。
まずNISAですが、令和6年1月より制度変更されます。年間投資枠が大幅に増加しまして、一般NISA(「成長投資枠」に名称変更)が120万円→240万円に、つみたてNISA(「つみたて投資枠」に名称変更)が40万円→120万円になります。しかも今までは一般分と積立分のどちらかしか選べなかったのが、どちらも併用することができるため、5年間の非課税限度額の枠が600~800万円→1,800万円と、かなり増えました。
もうひとつの大きな変化は、非課税枠が繰り返し何度でも使える点です。今までは、例えば1月に枠いっぱい120万円で株式を購入し、2月に売却したとすると、この120万円の枠はその年はもう使えませんでした。改正後のNISAは何度でも使えますので、その後また3月に購入→4月に売却→5月に購入、などと繰り返し使うことができます。
この新NISAは、かなり使えると思います。1,800万円というかなり大きい資金を非課税でガッツリ運用できるわけですし、枠が繰り返し使えるので相場に応じて銘柄入れ替えを流動的に行うことができ、短期売買にも使えることになります。ただし現行NISAもそうですが、NISA枠で買った株式を売却して損が出た際にその損失を一般購入分の利益と相殺できないというデメリットは残ったままです。あまり語られないですがこのデメリットは結構大きいので、配慮した上で利用する必要があります。
また暦年贈与の見直しですが、今までは相続開始3年前までに贈与された財産は、相続税の計算時にもう一度入れ直して計算されていましたが、令和6年1月以降これが「7年」に改正され、つまり7年前までの生前贈与は無効になります(一定期間内は3~7年前の贈与分が最大100万円までは有効)。もちろんそれ以前の贈与や相続人以外(例えば孫など)への贈与は有効ですので、全ての生前贈与の意味がなくなるわけではありませんが、より長期計画での相続対策が必要になってきます。
ただそれだけだと若い世代への財産移転がますます滞るじゃないか、ということで、相続時精算課税につき基礎控除が認められることになりました。相続時精算課税は2,500万円までの一定の生前贈与には贈与税を課さないで相続税で精算する制度ですが、一度使うと年間110万円の贈与税非課税枠が一切使えなくなっていました。これが使えるようになり、かつ無効になる生前贈与の額は基礎控除を引いた後の金額でいい(←結構重要です)と改正されたので、相続時精算課税を利用したほうが有利になるケースも増えてくると思います。
最後に、防衛費捻出のため令和6年以降のどこかで法人税4~4.5%、所得税1%を増税すると発表しています。やむを得ないと考えるか、冗談じゃない!か、賛否両論ありそうですね。