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「外れ馬券」をめぐる最高裁判決で税務当局側が敗訴

2015/03/27 16:02:58  税務調査
 昨年話題になったニュースで、「競馬の馬券配当で得た所得を申告していなかった」ため、約6億9,000万円(無申告加算税などを含む)を追徴課税された(!)、というものがあります。競馬の配当は一時所得であり、所得税の課税対象であることは間違いないのですが(一般的に少額のものがどれくらい申告されているかは別として)、納税者と国税局の見解が大きく分かれました。

 納税者の主張は、3年間に計約28億7,000万円分の馬券を購入し、計約30億1,000万円の配当を得たので、利益は(差し引きで)約1億4,000万円だ、というものでした。しごくもっともな主張だと思われます。

ところが所得税法の一時所得の規定にはこんな一文があります。「一時所得から差し引ける支出額は、その収入を得るために直接要した金額に限ります」と。
 そこで国税局はこう主張しました。「外れ馬券の購入代は、(外れだから、収入を得るための支出ではないので、)その収入を得るために直接要した金額ではない」と。つまり当たり馬券の購入代だけが差し引けるのだから、28億7,000万円のうち当たり馬券の購入代1億1,000万円だけが必要経費で、30億1,000万円-1億1,000万円=29億円(!!)に対して課税する、というものでした。

 実は一時所得の規定をあてはめると、国税局の主張は正当なのです。でも、ちょっとまってください。差し引き利益が1億4,000万円の者に6億9,000万円の課税ですと、5億5,000万円も赤字じゃないですか。当然払えるわけありませんよね!?

 そこで納税者は弁護士を通してこう主張しました。「この一連の馬券購入は、一時的な収入というよりも、(事業に準ずる規模の)雑所得である。雑所得であれば外れ馬券も、事業全体の必要経費として差し引けるはずである」と。

 実はこの納税者は、馬券を自動的に購入するソフトを使用して、独自の条件設定と計算式に基づいて、インターネットで長期間にわたって多数回かつ頻繁に網羅的な購入をして、多額の利益を恒常的に上げていました。つまりこれはもう趣味じゃなくて事業でしょう!ということですね。

 この度、この税務訴訟に対する最高裁判決が出まして、納税者側の主張が認められました。国が敗訴したわけです。でも、この判例によってすべての馬券収入が雑所得となるわけではなく、「ここまでやってたら」という例外的なものにはなると思います。競馬ファンの方は、お気を付けください。


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